俳優座公演「月光の海」に元特攻隊員役で主演している加藤剛さんが、「赤旗」日曜版5月19日号に登場し、「私も、戦争できょうだいを亡くしました」「今の憲法は、いわば、戦争で人生を断たれた人たちの夢の形見。亡くなった人の夢が結集し、化身したものだと思います。だから憲法を守り抜くことは、生きている人の使命だと思うのです」などと、改憲の動きがつよまるなか、憲法を守るつよい思いを語っています。
私は昔から加藤さんのファンです。加藤さんが出演されるTVもおおかた見ていますが、最近の映画では、「郡上一揆」、「日本の青空」(1.2)のほか、先日は「舟を紡ぐ」を見て来たところです。
ファンになったきっかけですが、40年以上も前の1967年4月、大阪の同じ会社で「夫婦共働き」をしていた私は、宮崎支店への転勤命令を受けました。しかしそれに従えば、妻が仕事を辞めるか、私が単身赴任を強いられることになります。このため、再考してほしいと要求しましたが受け入れられず、同年7月には解雇され、裁判でたたかわざるをえなくなりました。
「赤旗」の写真 |
私が勤めていた会社には、多くの婦人が働いていました。しかし、職場結婚をした後、夫が転勤命令を受けて、泣く泣く退社した人を身近に見た人も少なくありませんでしたから、私のたたかいを支持してくれる人もいましたが、「会社員が転勤するのは当たり前」「会社の給与はいいほうだから、女性は家庭を守ればいいのだ」「だいたい、樋口はゼイタクだ」などという人も少なくありませんでした。
そのようななか、解雇された私が支持者とともに、毎月1回発行していた樋口夫妻を励ます会「会報」(第5号1967.10.16発行 毎号タブロイド版2ページ)に、支持者のNさんが、TVドラマ「人間の条件」「三匹の侍」などに出演して人気をはくしていた、デビュー間もない加藤さんに出した質問に対する、次のような回答を載せたのです。
質問:樋口さんの要求をどのように思われますか?
加藤さん:人間として、もっとも自然な、基本的な要求だと、僕は思います。「人間は人間らしく生きるべきだ」という原則に立った思考が、もっとも必要なときではないでしょうか。今の日本は。
質問:婦人の働く権利について、どのように思われますか?
加藤さん:婦人労働者の要求を正当に評価し汲み上げること抜きには、職場の民主化は出来ないと思います。働く婦人が僕等のすばらしい観客であることを、僕はよく知っています。
質問:樋口夫妻のたたかいを支持していただくお気持ちを?
加藤さん:はたらく人間として僕もまた、共通の気持ちを持っています。僕にとって「人間」という言葉は、常に「闘い」という言葉と二重写しになっています。(中略、後略)
私の闘いが軌道に乗ったのは、実はこの記事からで、それからおよそ2年後の1969.7.10、私は画期的な勝訴判決をかちとり、さらに約2年後の職場復帰につながりました。私は加藤さんが万年筆で書いた、太字の分かりやすい楷書の文字を、今でもはっきり覚えていますが、これを改めて読むと、加藤さんはこのころから、根っから現憲法の体現者だったのだと思ったところです。