「世界」10月号の特集は「イチエフ 未収束の危機」。非「原子力ムラ」の科学者、京大原子炉実験所助教の小出浩章氏は、目下問題となっている原発から漏れ出ている、8000万ベクレルという汚染水がどれほど怖ろしいものかを説明し、これまで汚染水を10万トンタンカーで新潟柏崎原発に運び、目下全機停止中の廃液処理装置で処置すること。原子炉建屋周辺に深い遮水壁を建設し、炉心と地下水の接触を断って、汚染を局限化することなどを提案したが、実現しなかったことを開陳。また、今後の問題としては、原子炉を水で冷やし続ければ、汚染水が増加するのは避けがたいので、人類が一度たりとも経験したことがないことだから、うまくいくかどうかわからないけれど、事故直後にヨーロッパの方から提案された金属での冷却についても、再検討すべきではないかと提案しておられます。
八子ヶ峰のウメバチソウ 文章とは関係ありません |
折しも、わがアベ首相は、オリンピック総会の東京招致プレゼンで「汚染水の影響はイチエフの港湾0.3平方㎞の範囲内で完全にブロックされています」「健康問題については、いままでも、現在も、将来もまったく問題ないということをお約束します。さらに完全に問題ないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任を持って決定し、すでに着手しています」と述べたと報道。なんという厚顔無恥! オレオレ詐欺ヤロウ! 恥を知れ!
小出氏の文章の結びはこうです。「再稼働など論外であるはずなのですが、安倍さんは再稼働のみならず、新規に原子力発電所を建設することをめざし、さらに世界一の原子力技術で原発を輸出すると言っています。まことに、正気の沙汰ではありません」(この文章はいうまでもなく、アベプレゼンの前に書かれたものです)
正気でない人を首相とする 国民やあわれ
夏の八ヶ岳山麓滞在では、例年茅野図書館で、主に地もとの出版社の本を借りて読むのを楽しみにしてきましたが、今年は日和続きで山登りに忙しく、「ブック・オフ茅野店」の105円棚から、高杉良「ザ ゼネコン」、山田太一「沿線地図」「君を見上げて」、帚木篷生「ヒトラーの防具」上下を買ってきて読みました。
「ヒトラーの防具」はドイツ人の父親を持つ青年が、台頭してきたヒトラーに、剣道の防具を献呈する日本財界の行事に通訳として起用され、引き続いて外務省の武官としてベルリンに滞在し、ナチスの覇権と敗退を身近に経験していく物語。帚木篷生さんは、これまで多様な問題をモチーフに、物語を紡いでこられましたが、この本は日本憲兵の戦後を描いた「逃亡」と同じく戦争を扱いながら、ヒューマニズムに満ちた感動的な本で、夢中になって読んだところです。
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