2013年12月2日月曜日

ドキュメンタリー映画「フード・インク」が教えるもの


 11月26日、当市の自主映画サークル「久留米稲の花」が上映した、アメリカの独占企業やこれと一体の政治家が支配する、アメリカの農業・食糧に切り込む米ドキュメンタリー映画・「フード・インク」(2008年制作)を鑑賞しました。題名のフード・インクとは、農業・食糧が消費者の安心・安全を前提に、風土や気象条件に応じて、行われなければならないのに、アメリカでは利潤第一をモットーに工業製品化され、安心・安全は二の次で提供されている実態を指して、批判していると理解しました。 

大地の上を動いているのは大型コンバインだけの、地平線までつづく人っ子ひとりいない農場。立ち並ぶ馬鹿でかい鶏舎や牛舎。ただし鶏舎や牛舎の中は、排泄物にまみれた鶏や牛がぎゅうぎゅう詰めで、(悪臭に満ちて)います。家畜は十分歩き回れないので、足が弱ってよたよたとしか歩けず、倒れる鶏や牛も少なくありません。エサは先の農場で収穫されるコーンだけ。これには、成長促進剤や抗生物質が大量に混ぜられています。
このような飼育方法によって、通常の鶏や牛に比べて、肉を数週間早く市場に出せ、経費を減らし、利益もそれだけ上がるといいます。「強欲資本主義」のお手本のよう。 

出荷先の精肉工場。一刻の休みなく、ベルトコンベアのうえを流れてくる、牛肉と格闘しこれを切り裂く人。能率を上げるために、終日同じ作業をつづけます。切り裂かれた牛肉は、(おそらく、糞尿やBSE肉が混ざっていてもいっしょくたです)目をむくような大型ミキサーに放り込まれてひき肉にされます。

働いている多くの労働者は、もとは農業を営んでいましたが、寡占大企業に追われ、アメリカ産の安いコーンに押しつぶされた、メキシコなどからの移民などで、病気などに罹れば即刻クビ。そうなると、同じような労働者が、即刻連れてこられます。
また、農民を離農させている原因の一つは「種の保存」。モンサント社は遺伝子組み換え技術を用いて、コーンの種を独占し、自家製の種を用いている農民を高額な賠償訴訟で脅し、自社の種を用いない農民を農業から追い出しています。 

街中のマクドナルドやファストフードショップ。若いカップルや黒人家族に人気のメニューは、ご承知ハンバーガー。家でブロッコリーを買って料理を作るより、こちらが手間がいらず、安くておいしいからといいます。その結果、子ども、とりわけ貧困家庭の子どもに、肥満と糖尿病が広がっています。
私は未だかってマクドナルドに入ったことがありませんが、この映画のグロテスクな画面を観ていると、ハンバーガーをとても食おうとは思いません。その意味でも、若い人や子どもや孫に観てほしいです。 

安倍自民党とその補完勢力は、数々の悪政で暴走中ですが、TPP参加にも前のめりです。しかしそうなると、アメリカからフード・インク農産物がどっと入ってきて、日本の農産物と農業は踏みつぶされるでしょう。このドキュメンタリー映画はそう語り、小売り最大手のウォルマートが、消費者の商品の原材料表示などを求める運動に対して、一部妥協する場面を写し、食品の安全、生産の持続性を維持していくために、消費者が賢くならねばならないと訴えます。

 

1 件のコメント:

  1. 10代の頃に読んだ「怒りの葡萄」を思い出します。資本主義の下で農業が工業に化け始め、なれの果てがこの映画の姿だと思います。今も昔も立ち上がる人々の姿が必要だとつくづく思います。

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